夜景

大学を卒業し、国家試験にパスした私は、 借りていた部屋を引き払うことにしました──。 とその後のことを書こうとする私に、 とある風景が浮かびました。 その風景の中には、そのときの私がいます。 その私を見、部分部分でその私と一体となった私は、 一度その風景に戻って、そのときの私を書きたいと思ったのです。 書きたいことを書くことで浄化されるということを、 私は知っています…

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チベット

学生時代、チベットに行きたいと思っていました。 チベット仏教に根差した人々の素朴な暮らしや文化に惹かれるところがあり、 それを直接自分の目で見てやろうと思ったのです。 当時、バブルがはじけから数年がたっていました。 それでも日本は、米国に次ぐ先進国の地位にあり、 モノが豊かにあぶれるばかりの国でした。 人間とは不思議なものです。 豊かな国で暮らしているのに、若さゆえの意固地…

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シルクロードの旅

小学5年生か6年生の頃だった。 NHKで放映されたドキュメンタリー番組、 「シルクロードの旅」を覚えています。 若い頃船乗りだった父の晩年は、 見事なまでの好々爺に人が変わっていたけれど、 当時はまだ30代後半の海の男。 荒くれ兄ちゃんが少し大人になった風体で、 私ら兄弟への当たりは厳しかった。 一緒にいると圧を感じ、家では近づきがたい存在。 子ども頃の私は父に、自分の…

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