ドアの扉に額をぶつけて、小さなたんこぶをつくった。
間抜けな自分に腹がたつことがなかった。
痛むところを手でなでながら、さばさばとしていられた。
リビングの床にお茶をぶちまけてしまった。
湯のみが割れずに済んだのは、不幸中の幸いではあったが、
こぼしたお茶を布巾でふきながら私は、
今日はなにかヘンだぞ、という予兆めいたものを浮かべた。
決定的に浮かび上がったのは、玄関で靴を履こうとしたときだ。
固く結んであるはずの片方の靴紐が、緩んでいた。
こんなことは一年に一度あるかないかの確率で起こる事象だ。
いつも通りの時間に家を出ていたら、
今頃私はどうしていただろう。
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