ガイドブックの「地球の歩き方」です。
異国の地を歩いている。
陽光を浴び、風を受け、街の匂いを嗅ぐ。
すれ違う人、人です。
目的地を変更したくて、歩を止める。
背負っているリュックを左肩からするっと胸のところにもってきて抱っこし、
右手でリュックのチャックを開けると、もわっとしたのが、鼻をつく。
リュックの生地の成分と汗の蒸すのが混ざったのは、
夏の暑さと高めになった体温の同時攻撃からきている。
リュックに突っ込んだ右手で、中を当てずっぽうにかき回す。
飲みかけのペットボトルの水、筆記用具、タオルなどははじいて、
「地球の歩き方」を取り出します。
旅行は「地球の歩き方」がないと、なにも始まりません。
パスポートや現金、カードと、同じレベルの大切さをもちます。
いっそそれらと一緒に、
首にぶらさげる布製のポーチにしまえるものならしまって、
Tシャツの首元から直接素肌に密着させ、
それこそ常時肌身離さずにしておきたいのが、本音です。
旅行は、まだ始まったばかりなのに、
「地球の歩き方」には手垢がついていて、
年季が入った感に見えます。
古本を買い、もってきたのではありません。
渡航前の日本で、渡航中の機内で、渡航後のホテルで、
現地の下調べをするのに、読みこんでおいたからです。
節約自由旅行の指南書でもあります。
安価な宿泊先、庶民的なレストラン、
格安の交通手段、食料調達のためのスーパーなどの情報もそう。
観光地だけじゃなく、
あまり知られていない田舎のこととかもちゃんと書かれている。
それが、本の魅力でもあるのです。
とここまで書いて、今を思います。
当時を振り返ると、あれから、「情報はスマホをなぞる」まで来るのに、
長かったような短かったような。
アマノジャクには、普通の観光地がつまらなかったりします。
人込みに酔う体質も、関係します。
取り巻く街の活気あふれる中心から外れた地方へ心惹かれる。
静寂のある穏やかな風景の中には、
昔からずっと変わらない、人々の何気ない暮らしがあり、自然がある。
素敵です。
当時訪れた中東イスラエル。
約20日の滞在でした。