まぼろしチベット続々編

大学2年のとき、必須科目を4つ落として留年。
3つだったらぎりぎり上がれたのですが、これがいけませんでした。
3つ落として上がればよいとナメて試験に臨んだ結果でした。

1科目足りなくて、1年を棒に振ることになったわけですが、
当時、「この1年を無駄に過ごすまい」と思えたことは、とても幸いでした。

そんな気持ちを後押ししてくれる、こんなチャンスが与えられていました。
前年落とした科目の授業を優先させることを条件に、
担当の先生の許可が得られた授業には同輩らと出席でき、
試験を受けてパスすれば、単位として認められるというものでした。

取れる科目はできるだけ取っておこうと思いました。
翌年を少しでも楽にして、
アルバイトの時間を確保し、貯めた資金で海外へ行くということが、
私という全体の多くに占められていました。

それは結果として、
私が、その後の大学生活と人間関係から距離を置くことにつながるのですが、
一方でそれは他人からしたら、
楽しいはずの大学生活をなんともったいない、となるかもしれないけれど、
それはその後の私にとって、少なくともプラスに働いたのです。

奥底からボコボコと湧いてくる感じでした。
居ても立っても居られれないという焦燥にも似た感情を含んでいて、
その立ち込め方といったら、自分をうまく支えられず、
よろめきとともに不安を覚えるほどの強烈さをもち、
海外を渇望するふうにしかありませんでした。

そのことを改めて振り返ってみると、すごくわかるのです。
たくさんアルバイトができ、長期休暇は春、夏、冬と1年に3回あり、
そして、それこそ大きなリュック1つでポーンと海外へ飛んでいけるという、
あの自由さと気軽さに満ち溢れた時間というのは、
私のその後の人生に一度として訪れることはありませんでした。