幻のチベット続編

何かぼんやり別のことを考え、
学業に身の入らない大学生活を送っていました。
もともと要領が悪かったこともあり、
定期試験は一回でパスできず再試験でなんとか。
そういうすれすれな感じのところから、ずるっと滑り落ちてしまった。
一年留年するハメになったのは、大学2年のときでした。

留年すると、大学へ行く機会がかなり減ります。
前年落とした単位の授業に出るだけでよく、
厳密に言うと、授業に出なくてよいこともあり、
担当の先生によっては、
本番の試験で点数がとれてさえいればよいとの考えがありました。

薬大に限らず理系の大学には、学生実習(実験)があります。
実習は私にとって、大学の「かったるい」最たるものでした。

お昼をとったあと白衣を衣を着て、実習室に入ります。
実習は班ごとに始まります。

実習は、自分が主体的にかかわらなくともよかった。
最後にデーターを書き写せば済んだのです。
けれどそのデーターがとれるまでがたいへんでした。
夕食の時間をゆうに過ぎることも珍しくなかったのです。
留年生にはその実習がありませんでした。

留年した当初は意気消沈していた私でしたが、
やがて反動がきて、大きく跳ね返えったのを覚えました。

時間はたっぷりあり、
この時間を有効に過ごさないと、
なんだか将来自分がダメになるのではないかと思いました。

それまで一度も海外旅行をしたことがなかった私が、
俄然、海外へ出かけてみたくなったのです。

資金を貯める必要がありました。
給仕、販売員、運送業、電話営業と、アルバイトはなんでもやりました。
一人で(バックパーカーと言いましたが)、
関心のあった中国はもちろん、
他のアジアの地域、米国、欧州、中東などを訪れてきました。

そうそう、あれが絶版になると何かで知ったのは、今から10年前くらいだったかな。
「トーマスクック」という欧州鉄道の分厚い時刻表です。
当時、書店で購入したその分厚い日本語版を片手に、私は欧州を巡ったものです。