マスク生活

吸い込むウイルスや拡散するウイルスを減らせる。
マスクの効果をこう理解しています。

医療従事者の端くれという立場で、
果たしてこんな告白してもよいのか気が引けるのですが、
正直言って、長引くマスク生活に私はすごくストレス感じているのです。

当初は、少しくらい呼吸がしづらいと感じても、
未知のウイルスに対する警戒心と緊張感も手伝い、
マスクがそれほど苦痛に思えませんでした。

それに、夏頃にはきっと終息するだろう、
という楽観論を思い描いてもいたし、
そうなることを確信してもいたので、
それはそれはぜーんぜん、精神的な余裕を持てていたのです。

ところが初夏に入って梅雨を迎えるにつれ、
自分の憶測が見事に打ち砕かれつつある情勢に入ってくると、
ただただ先が見えないことへの焦燥感に駆られるようになったのです。

すごく不快だったのは、
マスクがすぐさま湿ってペタッと口に張り付く感覚とか、
暑苦しい圧迫感とか、
不織布の成分が揮発して吐く息とない交ぜとなり、
変な臭いになることでした。

臭いという悪気は、マスクという壁にぶつかって揺り戻され、
臭覚を通してリズミカルに脳を刺激してくる。
おかげで、マスクをつけると軽いうつ状態になってしまうのです。

私ら昭和世代の乳児期は、布のオシメしかなかったけれど、
オシメが汚物で蒸れておしりが気持ち悪いよ~とおぎゃーおぎゃーした、
赤ん坊の頃のあの遥かな記憶が、確かに手繰り寄せられるようでもありました。

だいたい、湿ったマスクは鼻孔への密着度をより高めます。
それで余計、呼吸がスムーズでないと感じるようになり、
顔だけがぷはぷはと水の中で溺れているような感覚になるのです。
けれども地上では2本の脚で立ち、歩いてもいる。
なんともアンバランスな感覚に襲われることになるのでした。

梅雨が明け、いっきに夏本番に突入したとき、
ああ、もう自分はマスクはこれまでだ、と観念するしかありませんでした。

室外ではマスクをするのを止め、
それでもスーパーなどの室内では無理してすると、
なにかさざ波が立つのにも似た苛立ちの感情がそわそわと広がってきて、
商品の選択に集中できなくなったりもしました。

あれから季節は春夏秋を過ぎ、もうすぐ冬に入ろうとしています。
少しはマスクに耐性ができた私ですが、
まだまだマスクを完全に受け入たわけではありません。
これからもマスク生活は続く、だろうに。