捨てないでよかった

あっ! 捨ててなかった。
自宅で年末に処分できなかったモノを整理していたら、
偶然、古いCDを見つけました。

中国に留学していた約25年前、
現地で購入した香港の女性歌手、ウォン・フェイのベストアルバム。

北京出身の彼女を香港の歌手と呼ぶのは、
正しい言い方ではないかもしれません。

学校を卒業すると彼女は香港に渡り、歌に出会った。
そしてついに、アジアの歌姫と呼ばれる地位まで登りつめた。

彼女が香港に渡った当時、中国大陸と香港の経済格差は歴然としていました。
アメリカン・ドリームじゃないけれど、
香港・ドリームというものを彼女は見事、体現したのです。


哀愁を感じさせる彼女の歌声は、いわゆる聴かせる歌にしっくりきます。
留学当時、勉強の合間にCDを聴きながら、
彼女の広東語の歌をよく口ずさんだものです。

私は本来、使わなくなった古いモノを捨ててしまう性分なのです。
にもかかわらず、そんな古いCDがとってあった。
それは自分にとって、ある種驚きの出来事でした。
彼女の歌がよっぽど好きだったんだと思います。

そうした驚きの意識がスーッと収斂していった先にあったのは、
「いますぐ彼女の歌が聴きたい!」というひらめきの光でした。
それから私はしばし時を忘れて、彼女の歌声に浸りました。


音楽を聴くと、その時代時代の出来事が鮮明に思い起こされます。
いまは音楽をCDで聴く時代じゃないけれど、
こうした時代背景がまた、四半世紀という時の流れを感じさせもします。

現在の彼女の活動が気になり、ネットで検索してみました。
ところが今の歌より、あの頃の歌の方が断然よかった。

昔の自分を超えられない彼女を知ってしまったようで、
ちょっと残念な気持ちになりました。

CDを捨てないでよかった。