サンマ

私は南東北の浜育ち。
秋の味覚といえばサンマを思い浮かべます。

スーパーの鮮魚コーナーを覗くと、
今年のサンマも近年同様不漁続きで価格が高止まりなよう。
しかも“小ぶり”で、実際食べてみましたが、脂の乗りもイマイチ。

子供時代の田舎では、
脂が乗った特大サンマがタダで手に入ることもありました。

早朝の水揚げ作業も終わって静けさを取り戻した午後の港。
停船中の漁船のデッキに立つ漁師の眼下の岸壁には、
バケツや大き目のビニール袋を手にした地元のおばちゃんや子供らが集います。

漁師の傍らには、水色の大きな底の深い四角いかご3つ4つに山盛りのサンマが。
当時はサンマが獲れすぎていました。
彼らの狙いは、漁獲高を抑えるために市場に出さなかったサンマを、
漁師からおすそ分けしてもらうことでした。


「おんちゃ~ん(おじさん)。ちょうだぁ~い」
「いっぱい入れて! 近所にも配っから」
「奥さん、そ~んなにどうすんだぁ? 食いきんねぇべ」

漁師は口は悪いけど、
素手で3、4匹のサンマをつかみ取ってはバケツがいっぱいになるまで入れてくれ、
「ほらっ! 持ってげ」と。

子供心にも、ただでもらえることが楽しくて嬉しかったですね。
後日、「恥ずかしいことをするな!」と、
父に一喝されてからは、もらいに行かなくなりましたが。

あの頃のサンマは、焼くにもグリルに収まらないくらい“大ぶり”で、
焼けば腹の皮が黄金色にぷくっと大豆大に膨らみ、
ジュワジュワと脂が沸き立つように出ててきたものです。

もう、あんなサンマにありつくことはできないのかしらん。
私の中で、昭和という時代のサンマの思い出の風景が薄れてゆく。
何かさみしくなります。