水分補給

炎暑が続いている。

こまめな水分補給を!
お馴染みの注意喚起の文言に、
はい。はい。わかってますよ。

事は命にかかわる─けれど、
耳にタコが、と言いたくもなってしまう。

おそらく大方は、
そうしなければならないことを十分に理解しているはずだ。

にもかかわらず連日、
子どもならまだしも大人が熱中症で病院へ搬送される事例が後を絶たない。
逆に言えば、それほど暑さが厳しいということなのだろう。

実際に役に立つのかわからないけれど、
水分補給の注意点について一つ、話しておこう。

暑いから、冷たい水分でのどを潤す。
ごく自然な欲求だと思う。

でも、そればかりをごくごくとやってしまい、
便を緩くしてしまったり、
食欲を落としてしまったりしてはいないだろうか。

便が緩くなるのは、水分の吸収が低下している証。
それに食欲が落ちると、
身体のオーバーヒートを防ぐ透明な体液の材料が、
食べものから得られにくくなるのだ。

とは言っても外は、
黄色の重い空気が全身にからみつくようで、
頭の中までが溶けてしまいそうになる暑さ。

水分補給は何も温かいモノで、
と言うつもりは毛頭ないけれど、
ギンギンに冷えた水分の過剰な摂取で、
胃腸のはたらきを弱らせないよう注意して欲しい。

漢方を知らない方には、ちょっとマニアックな話だが─。
今月の22日は、
御茶ノ水で夏バテに使う漢方薬、「清暑益気湯」(せいしょえっきとう)や
「生脈散」(しょうみゃくさん)についての講演をする予定。

これらの漢方薬は、
疲労感にともなう口渇や熱感といった熱症状を改善するものだが、
実際に身体をクールダウンさせる性質(寒性)は弱い。
それどころか、夏バテで弱った胃腸に対する配慮から、
そこを温める性質さえ持っているのだ。
理由は、おわかりだろう。
胃腸を冷やしてしまっては、元も子もなくなってしまう。

夏はまだ続く。
どうかご自愛のほどを。