不確かな世界

算数で習う「掛け算」は、数学の基礎として不変のものです。

一方、歴史教科書に出てくる史実は、
のちに見つかる文献や資料などの解析によって、
否定される可能性をはらんでいます。

歴史だけに限りません。
文学や哲学などにおいても、
端的に言えば、
不確かなものを学問として、
あたかも真実のこととして学ぶわけです。

しかし、不思議なものです。
たとえ、あとでそれがそうではないとわかっても、
だれもその間違いについて、だれを批判するわけでもなく、
否定されたものは、やがて過去の定説となり、
一片のチリのように時空の渦に吸い込まれ、消えてゆくだけなのですから。

専門外で、大変恐縮ですが、
抗がん剤の使い方が、変わりつつあります。
これまでは、胃がんか大腸がんかで、使う薬が異なっていたのですが、
今後は、からだのどこにがんであるかではなく、
がん細胞にどんな遺伝子特性があるかで、薬が使われるというのです。

うがった言い方をすれば、これまで薬の効かなかったがんの多くに、
薬に適合しない遺伝子特性をもつものがあったのであり、
こうした事実は、重く受け止められるべきでしょう。

科学技術の進歩が、不確かな世界にあることを実感するのです。

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