私がこう考えるのも、漢方という伝統医学に携わっていることが理由の1つにあります。
ことわざには道理があり、漢方には効果があるからこそ、
後世から後世へと人々に継承されてきたわけですから。
健康に関することわざで、
現代人にとっては“金言”といえるものに「腹八合医者いらず」があります。
これを励行すれば、生活習慣病の多くを予防・改善できるでしょう。
このことわざの意味を、もっと深く掘り下げてみます。
伝統医学では、過食や美食を好んだり、食欲がないのに食べたりしていると、
体内に「痰」(たん)とよばれる病理産物ができると考えます。
だれもがすぐにイメージできる、気道から分泌され、口から吐き出されるタンを含めて、
「痰」には、もっと広い意味があるのです。
例えば、過剰な血中脂質や血糖値、骨や腱にできる“こぶ”、
蓄膿症にみられる“うみ”、激しい皮膚のかゆみの原因となるタンパク質、
認知症やうつ病の原因となる脳にたまる老廃物─など、
これらをすべて「痰」と考えるのです。
また伝統医学では、「痰」が体内にたまると、血管を狭めて血流を低下させ、
「瘀血」(おけつ)とよばれる血の塊ができるとも考えます。
そのため、中国の医療従事者は昔から、
「怪病多痰」(難治性の病気の原因の多くは痰)といって、「痰」を非常に恐れたのです。
暴飲暴食をしなくとも、食欲がないのに時間がきたから食べる、
という生活を送っている人がいます。
成長期にある若者や、肉体を酷使する仕事についている人は別にして、
1日に3食きちんと食べなければ健康を保てない、
という固定概念に縛られる必要はありません。
無理に食べても、うまく消化できずに「痰」ができ、内臓に負担をかけてしまいますから。
とりわけ常にだるさを感じ、むくんだり、食後に眠くなったりするという方は、要注意です。
もしそうであるなら、思い切って食事量を減らし、
ときには3食を2食にするなどして空腹感を出しましょう。
きっといまよりも、からだが軽く感じるようになり、気分もすっきりするはずですよ。