古典の理解

小学4年生から十代の後半頃まで、成長痛に悩まされました。
この病気は、スポーツをする男の子に多くみられることから、
「スポーツ膝」ともよばれます。

小学4年生から中学3年生まで、剣道をやっていました。
膝が痛むのは、成長期に膝を使い過ぎて、膝の軟骨に炎症が起きることだとされます。

痛むというより、ズキズキと疼きました。
これが、数か月に一度くらいの割合で襲ってくるのです。
夕方くらいから脚がだるくなり、
「まずいな」と思っていると、疼きがだんだん増してきて、
ひどいときは歩行が困難となりました。
夜間に疼きがピークを迎えると、眠れなくなることもありました。

遠足でたくさん歩き、脚が疲れたときに、強い疼きがでたことがありました。
一方、普段通りの生活をしていても、疼いたこともありました。
疼く原因は、そのときの体調も関係していたのかもしれません。

どんなに疼いても、膝の外見は、何ら変化が見られません。
翌朝になると、脚のだるさが残るだけで、疼きは治っています。
病院に行っても、家族に話しても、理解されないもどかしさがありました。

疼けば、今日は我慢するしかないと覚悟しながら、
自宅にある冷シップを両膝に貼り、時が過ぎるのを待ちました。

しばらくして、あることに気づきました。
お風呂に入ると、疼きが和らぐのです。

夜中に家族が寝静まるなか、疼いて眠れないときは、
お風呂に入り直して疼きを鎮めようとしたこともあります。
小学生ながら、湯船の水圧が膝によいのだと、思っていました。

お風呂から上がると、再度、冷シップを膝に貼り、床に就きました。
楽になった膝がキューっと冷えて、不快でした。
膝の冷えが、ももの後ろから腰、背中にまでジンジン伝わるのですが、
我慢しました。

小学五年生とき、またあることに気づきました。
温めた膝を、冷シップで冷やしてはいけないのだと。

それから、膝に冷シップを貼るのは止めました。
疼けば、片方の膝を、両手を使って順にこすり、温めるようにしたのです。

漢方の古典には、次の一文があります。
「寒者熱之」(冷えているならば、温めなさい)
「熱者寒之」(熱くなっているならば、冷ましなさい)
私が小学五年生のときに身をもって知った、漢方治療の根本の原理です。